top of page

最高裁判決、川崎市内のマンション評価で路線価を否定し、不動産鑑定を採用  

更新日:2023年2月6日


令和4年4月19日の最高裁判決において、川崎市内、東京都杉並区内の マンション評価で路線価を否定、不動産鑑定評価を採用






路線価と実勢価格との価格差を利用した不動産購入による相続税対策の否認




□事案のあらまし



 1.北海道で不動産会社を経営していた当時90歳の男性が        川崎市内と杉並区内にマンション計2棟を購入  2.相続税路線価評価額        川崎市内(1億3000万円)        杉並区内(2億円)  3.故人が購入した価額         川崎市内(5億5000万円)        杉並区内(8億3700万円)  4.不動産鑑定評価額        川崎市内(5億1900万円)        杉並区内(7億5400万円  5.一、二審の判決認定額        川崎市内(5億1900万円)        杉並区内(7億5400万円




□判決の要旨  



 租税負担の公平に反するというべき事情がある場合」は  例外規定(相続税基本通達総則6項)の適用を認めた  <判決文抜粋>  「本件各不動産の価額について評価通達の定める  方法による画一的な評価を行うことは、  本件購入・借入れのような行為をせず、  又 はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に  に看過し難い不均衡を生じさ せ、  実質的な租税負担の公平に反するというべきである」  したがって、不動産の価額を評価通達の定めによらず、  評価通達6項に基づき鑑定評価額により評価したことは  適法であると認められる。  <相続税基本通達総則6項>  (この通達の定めにより難い場合の評価)    この通達の定めによって評価することが  著しく不適当と認められる財産の価額は、  国税庁長官の指示を受けて評価する。  なお評価通達総則6項は、過去のバブル崩壊後、  相続税評価額が今回とは逆に、時価よりも高い土地もみられ、  当時納税者は物納を選択したり、訴訟に持ち込むケースもあり、  これを是正することが当初の目的であった。  しかし、現在その解釈が拡大し、今回のような節税対策の  対応のために運用されている。   ”PDF 2022.4.19最高裁判例“



       □今回の事案が生じた原因  



 一般に路線価による財産評価はおおむね時価の  8割程度となるように設定されていますが、  1.不動産に投資資金が大量に流入する時期や  2.容積率の多いマンション適地  3.地価変動が大きい首都圏等の商業地  などでは、8割という数字に追いついていない価額が  路線価に設定されてしまうこともあります。  また、今回の事案の被相続人は、札幌在住の方でしたが、  相続不動産はいずれも、上記条件に該当する首都圏にあります。    なお判決においては、  「本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には  大きなかい離があるということができるものの、  このことをもって上記 事情があるということはできない。」  そのほかの「実質的な租税負担の公平に反する事情」があることが、  「看過し難い不均衡を生じさせ」と述べていますが、  そもそも路線価と実勢価格との価格差が、  ここまで大きく開いてなければ,今回の手法は、  採用出来なかったと考えます。  





       □資産を遺すためには    今回の判決の影響及び今後の課題    どこまでの相続対策が許容されるのか、     判決文を抜粋すると   「被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが 近い将来 発生す ることが   予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ   又 は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、   あえて本件購入・借 入れを企画して実行したというのであるから、   租税負担の軽減 をも意図してこれを 行ったものといえる。」  と述べているが、    今回の判決においては  ①近い将来とは何年までか  今回は不動産取得から相続開始まで約3年前後の期間がありました。    ②相続税負担軽減の範囲等の明確な基準が示されなった  一般的に不動産の取得に際しては、相続税への影響を考慮するが、  どこまでの相続対策が許容されるのか、  どこからが看過し難い相続対策と判断されるのかについて、  明確な基準が示されませんでした。







Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page